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図書館にルヴァを迎えに行った二人が何と説明したのか、彼は慌てて宮殿に入ってきた。
そして、彼が扉を開けたその瞬間―――
『ルヴァ様、お誕生日おめでとうございます!!』
扉の近くで待ち構えていたマルセル、メル、ティムカの三人から笑顔で祝福を受けた。
「え?……あー、その…ありがとうございます」
しばらく呆気に取られていたルヴァだったが、言われた言葉に今日が何の日だったのかを思い出す。
「さ、早くロウソクを消してください!」
部屋の中央にある大きなテーブルには、大きなバースデーケーキが置かれている。
「何だか照れちゃいますねー」
照れながらも、凄く幸せそうに笑うルヴァを見守る皆の視線は、優しさに満ちたものだった。
ケーキの前へと促され、ロウソクを吹き消そうとしたその時だった。
バタンッと、大きな音をたてて扉が開けられる。
「何とか、間に合ったか?」
皆がその音と声に振り返ると、慌ててやってきたのだろうか、少し髪を乱したアリオスが部屋の入り口に立っていた。
「アリオス…貴方まで来てくれたんですかー?」
滅多に自分のところに遊びに来ない彼までが、お祝いに来てくれるとは。
そんな驚きを隠しきれない声でルヴァは訊いた。
「俺が仲間の祝いをしに来ちゃまずいか?」
照れ隠しなのか、どこかムスッとした表情で答えるアリオスに、本当に嬉しそうな満面の笑みでルヴァは心からの感謝を伝える。
「ふふ…ありがとう、アリオス。嬉しいですよー」
「ほら、ロウソク消すんだろ?お子様たちがお待ちかねだぜ」
アリオスは注目を集めているのに気付き、ぷいっと横を向いて視線をケーキに向けさせる。
「えーと、それでは……」
ふぅっ
ルヴァが本日迎えた年の数のローソクの火が消される。
それと同時に、部屋中からワーッという歓声と拍手が起こる。
「おめでとうございます!」
「ハッピーバースデー!ルヴァ様♪」
みんなの口からルヴァへ、次々と祝福の言葉が贈られる。
「皆さん、今日は本当にありがとうございます」
ルヴァは感激の余り涙を滲ませながら、その場にいる全員に感謝する。
――素晴らしい仲間たちに出会えて、本当に良かった……
その喜びをかみしめるルヴァの元に、神鳥の守護聖を代表してジュリアスが、聖獣の宇宙を代表してレオナードがやってきた。
「ルヴァ。そなたにはいつも世話になっている。本当に、感謝してもしきれない程……大切な仲間だと思っている」
普段は守護聖の長として、厳格な表情を崩さないジュリアスが優しく微笑んで告げる。
「ジュリアス……私も貴方を、大切な仲間だと思っています。貴方の優しさが、皆にも伝わるように願っていますよ」
ルヴァはジュリアスの言葉に頷き、彼の持つ優しさが皆にも伝わればいい…そう願った。
こういうのには慣れていないらしく、頭をぼりぼりと掻きながらも自分の考えを伝えようとするレオナード。
「俺様とアンタは、決定的にタイプが違うと思ってンだけどよォ……不思議と、キライにゃなれねーンだよな。ま、これからもヨロシクな!」
いつもとは違う彼の様子に、くすっと笑ってルヴァは返す。
「こちらこそ、これからもよろしくお願いしますね」
「それじゃあ、ルヴァ様。俺らからルヴァ様にプレゼントですわ」
チャーリーの言葉を合図にして、守護聖たちからルヴァへ、それぞれプレゼントが渡される。
「あのー…このお酒の数々は一体……………?」
アリオスからは彼のお気に入りのアルカディア特産ワイン、オスカーからは神鳥の宇宙のある辺境惑星でしか手に入らないという珍しい果物から作った酒、オリヴィエからは女性にも飲みやすいというフルーツワイン、レオナードからはかなり強い火の酒とやらを贈られたルヴァは、その酒の多さに戸惑う。
「フッ……いざという時に勇気の出る薬だと思ってくれ」
(あのー『いざという時』というのはいつなんですか、オスカー…)
「このお酒なら、あのコと一緒に飲めるだろうから是非飲んで頂戴よ☆」
(はあ……やっぱりアンジェリークと一緒に飲むのが前提なんですね、オリヴィエ)
「俺のオススメだ。たまには俺の酒にも付き合えよルヴァ」
(貴方ほどには飲めませんけど、お相伴に預かりますねアリオス)
「何も考えずに眠っちまいたい時には効くゼ?こいつはよォ」
(私の場合急性アルコール中毒になるかもしれませんが、お気持ちはありがたく受け取っておきますよ。レオナード)
誕生日を皆が祝ってくれるのはとても嬉しい。
しかし、一番祝って欲しい相手が、今ここに居ない――
(かなり遅くなるかもしれないという事ですからねぇ…今日中に逢えるのでしょうか………)
最近逢えずにいる恋人の可愛い笑顔を思い出し、ルヴァは皆に気付かれない様小さくため息を吐いた。
パーティーも中ほどに差し掛かり、陽が落ちて外が暗くなった頃、途中で姿が見えなくなっていたオリヴィエがルヴァに近づいてきた。
「残りのプレゼントは全部、アンタの邸に運んでおいたよ」
オリヴィエが笑いながら告げる。
そして付け加えてルヴァに小さく耳打ちする。
「アンタの可愛いアンジェリークは、今頃アンタの邸で待ってるよ♪」
「え?!」
オリヴィエの言葉にルヴァは驚いて声を上げた。
「皆には上手く言っとくから、アンタは早く帰ってあげなよ」
パチンとウインクをしながら、顔を真っ赤にして動揺するルヴァを促す。
「えっあの……………ま、まさか、セイランの言っていた『アレ』というのは!?」
「察しがいいね♪でもワタシだけじゃなくて、女の子達からのプレゼントだよ」
結局ルヴァは、愛しい恋人に早く逢いたい気持ちを優先して、早々に私邸へと戻る事にした。
激しく動揺していたので、ルヴァの後姿を見送る皆の、優しく見守る視線に気付かずに………
一方その頃、ルヴァの私邸へと届けられた『ビックリプレゼント』の方は―――
「さて、そろそろルヴァ様がいらっしゃる頃だと思うから、ワタシたちはもう行くね!」
レイチェルはウインクしながら、緊張する親友に声をかける。
「アンジェリーク、自信を持って頂戴。今のあなた、凄く綺麗よ」
「全く。ルヴァは幸せ者ね」
神鳥の女王と補佐官が、人形の様に固まってしまったアンジェリークの緊張を解す。
「へ、陛下……陛下の時は、緊張しなかったんですか?」
これからの事を考えて顔を真っ赤にする彼女の疑問に、先輩女王はにっこりと笑って答える。
「勿論、緊張したわよ?でも、それ以上に好きだもの。何とかなるわよ♪」
「私の時はどうなるのかって考えると……確かに緊張しますね。楽しみでもありますけど」
エンジュが難しい顔をしながら、アンジェリークの現在置かれた心境を理解しようとする。
そろそろ本当に行かないと、ルヴァと遭遇してしまう事になる。
時計を見た神鳥の女王は、大事な妹の様に思うアンジェリークをぎゅっと抱きしめて告げる。
「私たちからのプレゼントを置いていくから、落ち着いたら見てね」
そしてルヴァの私邸には、アンジェリークだけが残される。
(5)に続く
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