―もしも明日で世界が滅ぶなら―
| 草木も眠っている時間、周囲を森に囲まれた花畑の中心で、ただ一輪咲くのは最愛の少女。 年が明けて最初の夜明けを待つ黎明の空の下で、月明かりに照らされた彼女は振り向き様に微笑んで問いかけてきた。 「もし、明日で世界が滅んでしまうとしたら、ルヴァ様ならどうします?」 それは世界に対して何も責任を負う事の無い者なら、一度は考えるかもしれない。 しかしルヴァの目の前に立つ少女は、間違いなく世界の行く末を左右できる存在。 彼が守護聖として仕えている女王が居る宇宙とは別の、今二人が居る聖獣の宇宙の調和を保つ女王陛下なのだ。 恋人の発言の意図が掴めず固まっているルヴァを安心させるように、かつて彼の教え子でもあった栗色の髪の天使は言った。 「勿論、今の私の立場でそんな事を考えていいとは思いませんし、世界が滅ぶような真似をするつもりもありません。そんな事は誰にもさせません。こんな話、ルヴァ様以外には間違ってもしません」 「そっ…そうですかー。それを聞いて安心しましたよアンジェ。………でも、どうして突然そんな事を?」 彼女が女王としての責任を放棄した訳では無い事にルヴァは安堵しながらも、質問を投げかけた真意を聞く。 アンジェリークはやわらかく微笑むと、大事な内緒話をする時のように人差し指を唇に当てて答える。 「それはね………ルヴァ様だからですよ」 誰よりも大好きな貴方だから……という言葉は口にしないまま、彼しか知らない艶を帯びた微笑を湛え、アンジェリークはルヴァの傍を離れて夜の花畑を蝶のように舞う。 彼女の動きにあわせて、白いワンピースの裾がひらひら踊る。 どこか幻想的なその光景に、ルヴァは声をかけるのも忘れてしばしの間見入った。 彼の最愛の天使はそれ以上答えるつもりが無い上、ルヴァが彼女の質問に答えるまで触れさせてもくれないようだ。 愛しい温もりを閉じ込めようと手を伸ばせば、スルリとかわされてしまう。 自分だけに投げかけられた問い。 自分だけが知る、アンジェリークの嫣然とした表情。 その事実に、自分は紛れも無く彼女の恋人なのだと再度認識して、誇らしいと同時に愛おしさがこみ上げる。 だから尚更、このまま抱きしめさせてくれないのは困る。 ルヴァは彼の天使を捕まえる為に、質問への答を考え始めた。 そして導き出した考えを、はっきりと告げる。 「そうですねー。もし明日で世界が滅びてしまうのだとしても、やはり私はその原因究明に全力を尽くすでしょう。でも………」 「……でも?」 ルヴァは少し不安そうに自分を見上げてくるアンジェリークを引き寄せて、逃げないようにしっかりと腕の中に閉じ込める。 手触りの良い栗色の長い髪を撫でながら、自分だけを映す大きな青緑の瞳を真っ直ぐに見つめて、囁いた。 「私という存在が無くなる瞬間には、貴女の事だけを思いますよ……全身全霊で」 「……っ!!」 感極まって瞳を潤ませた恋人の額にそっと口付けを落とし、ルヴァはふわりと笑う。 「誰よりも、貴女の事が好きですよ…アンジェリーク」 「ルヴァ様………私もルヴァ様が大好きです。ずっと……」 「ずっと一緒に居てください……傍に居られない時でも、私のここに………ね?」 彼はアンジェリークの片手を取って、自分の胸―心臓のある場所―に触れさせる。 こくんと頷いた彼女の顎を軽く持ち上げると、待っていたように目が閉じられた。 長く整った睫毛に誘われるように、ルヴァはそのまま顔を近づけていく―――… -Fin- 〜後書き〜 ブログで年賀状代わりに書いてたルヴァコレSSを再録しました。 ルヴァコレお好きな方々に、かなり一方的に捧げますvv 2008.3.1 UP |
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