―かくも強き想いの代償となるものは―

それは新宇宙の女王を決める為の試験期間中、こっそり僕の部屋へ遊びに来ていた君と言葉遊びをしていた時の、他愛ないおねだり。

「ねえ、セイラン。お姫様抱っこしてくれる?」
「やだね」

そんな気分じゃなかったから、即答で却下させて貰った。
彼女の方もただ言ってみただけで、本気で頼んでいる訳ではなかったらしく、予想通りの僕の反応に「あ、やっぱり?」と楽しそうに笑っていた。
あの時君が女王として本気で命令したなら、僕にそれを断る事は出来なかったかもしれないけどね。
いや。君がそんな事をわざわざ女王として命令するような人間だったら、かえって僕は従わなかっただろうな。
ここまで君という存在に惹かれる事もなかっただろう。


―――そして今。
皇帝に塔ごと封印されてからずっと、親友でもある補佐官のロザリア様と二人きりで敵と戦い続けていた君は、気を失った状態で僕に姫抱きで運ばれている。
最後に見た時より、疲労困憊して少しやつれているようだ。
安全な場所へ行く途中、何度か交代しようかと言ってきた人たちが居たけど、僕は頑として譲らなかった。
そんな僕の態度に、ジュリアス様が何か言おうと口を開く。
するといつの間に側に来ていたのか、ルヴァ様がいつも通りのおっとりした口調でやんわりと彼を諌めた。

「ジュリアス、ここは彼にお任せしましょう」
「ルヴァか。そなたが言うなら………陛下をよろしく頼むぞ。セイラン」
「…言われるまでもありませんよ」

確かルヴァ様は、塔の最上階で皇帝としてのアリオスの登場と先輩女王である君が倒れた事でショックを受けていた栗色の髪のアンジェリークを励ましていらしたはず。
全く。ご自分もアリオスの事でショックが大きいだろうに……筋金入りのお人好しだね、あの方は。
正体が分かってからも彼女とルヴァ様は、アリオスを嫌いになれずにいる。
それは僕も同じなんだけどね………
――でも。
君をこんな目にあわせた事だけは、許すつもりはない。
このまま君を失うくらいなら、僕の心に消えない傷が残っても構わない。
君に抱くこの感情が、はたして「愛」と呼べるかどうかは分からない。
ただ、どうしても失いたくないものの為に、戦う必要があるだけ。


全てが終わった後、永久に君と逢えなくなるかもしれなくとも。
今この瞬間だけは……アンジェリーク、君の温もりを感じさせてくれないか―――


-Fin-

〜後書きという名の言い訳〜
ブログで回答していた『胸キュンバトン』で書いたセイリモSSの再録です。
うちのアリオスは初回クリア時、コレット含めてもルヴァ様と最も仲が良かったのですよ(笑)

ここまで読んで下さってありがとうございます

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