―雪のようで優しく温かい、その名は…―

陽の光に照らされて白銀に輝く雪原は、所々雪が解けて地面が顔を覗かせていたが、未だ緑は全くと言って良いほど見られない。
そんな未だ春浅いその場所に、サク、サク、サク…とゆっくり雪を踏みしめて歩く音が聞こえてきた。

歩いているのは青年と少女。
短いブルーグリーンの髪に白い布を巻きつけ黒茶色の毛皮で出来た暖かそうな防寒服を着た青年は、白い防寒帽にやはり白いコートを纏った栗色の髪の少女が転ばないように、足元を確認しながら彼女の先を歩く。

白い息を吐きながら、手袋を嵌めた手をしっかりと繋いで、二人は目的のものを探していた。
雪の上を歩いている内、少女の方が先に何かに気付いたようだ。
大きな青緑の瞳を輝かせて、その場所を指で示す。
少女が指差したのは、雪が解けて地面が露になったところ。
湿って黒っぽくなった中に、僅かに緑色のものが見えていた。

「ルヴァ様、あれじゃないですか?」
「ああ、そうかもしれませんねー。近づいて見てみましょう」

手を繋いだまま慌てずゆっくりと二人が近づいた場所にあったのは、予想に違わぬ植物。
白い釣鐘型の花が、ちらほらと咲いていた。
まだ寒い早春、雪に覆われて慎ましく咲くその花を見る二人は、自然と穏やかな微笑みを浮かべる。

「ふふ…本当に可愛らしいですねー。私はどうしても貴女と、この花を雪の残る場所で見てみたかったんですよー」
「ルヴァ様…嬉しいです!この花大好きなんですよ、私」
「私も大好きですよー。この花は、あるものを連想させますからねー」

ルヴァは少年のような笑顔で、にっこりと隣の少女に問う。

「さてアンジェリーク。この花は何に似ていると思いますか?」
「えっと………ルヴァ様がこのスノードロップを見て思い出すもの、ですよね?」

首を傾げて質問の意味を確認するアンジェリークに頷くと、彼はヒントを与えた。

「この花の伝説については、以前お話しましたよね?」
「”天使が雪を変化させて創り出した花”でしたね」
「ええ。それで分かりませんかー?」

にこにこと笑う恋人の前で、アンジェリークはしばらく唸って考えていたが、やがて降参した。
困ったように首をすくめて笑う彼女をそっと抱き寄せると、ルヴァは手触りの良い栗色の髪を手櫛で梳きながら耳元で囁く。

「それはね……………貴女ですよ、アンジェ」
「!」

普段よりも低めの甘い声で恋人に囁かれたアンジェリークは、一瞬にして頬を赤く染めた。
心拍数が一気に跳ね上がる。

「貴女は何度も私に『希望』を与えてくれました…貴女を失うかもしれないという不安と恐怖に負けそうになっていた私を、数え切れない程励ましてくれたんですよ………」
「ルヴァ様……」
「もう少し、もう少しの間だけ、貴女の温もりを確かめさせて下さい…またしばらく、逢えそうにないですから………ね?」
「……はい」

ルヴァはこの宇宙の地の守護聖として、アンジェリークは新宇宙の女王補佐官として、それぞれの場所ですべき事があるから。
宇宙を越えて再会した恋人達は、春を告げる天使の花たちに見守られる中、静かに温もりを分かち合っていた………


-Fin-



〜後書きという名の言い訳〜
設定としては、私の初めてのルヴァコレ話『陽だまりをつれて』の後日ネタです。
キーワード見てる内にスノードロップが浮かんできて、それだったらこれ書こう!みたいな感じで妄想が膨らみましたv
二人共久しぶりにまとまったお休み貰ったみたいですね。楽しんで頂ければ幸いですm(_ _)m

2007.7.29 UP

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