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長く苦しい旅の末に故郷の宇宙の危機を救った後、アンジェリークは自らの治める新宇宙へと帰ってきた。
次元回廊を通り抜けるなり、迎えに出ていたレイチェルに力いっぱい抱きつかれる。
長く新宇宙を不在にしていたアンジェリークに代わって補佐官として留守を守り続けた彼女にも、色々不安や心配があったのだろう。
微かに震えるレイチェルを安心させるように、アンジェリークは彼女の背に腕を回して抱きしめた。
「ただいま、レイチェル…私が居ない間、頑張ってくれてありがとう」
「おかえりアンジェ!それと………ありがとね」
体を離して互いに小さく笑い合った後、二人はアンジェリークの私室でお茶を飲みながら、これまでの出来事を話し合った。
レイチェルの話題は、アンジェリークが不在の間の新宇宙の状況について。
彼女が居ない間もトラブルが無かった訳ではないが、危機的な状況に陥る事も無く順調に宇宙が発展し続けているという事。
アンジェリークの方は、久々に再会した女王や補佐官ロザリア、守護聖たちに協力者たちの事、彼らから別れ際に受け取った新宇宙の留守を預かるレイチェルへの伝言や手紙、事件の顛末や仲間でもあり皇帝を名乗る敵でもあったアリオスの事、それに―――二人がまだ女王候補だった頃からアンジェリークがひたむきに想いを寄せていたある人物が、ずっと側で守り、励まし、支えてくれた事を。
「そっか………辛いだけじゃなくて良かったよ」
レイチェルの言葉にはにかんだ笑みで頷くアンジェリークの表情は、本当に綺麗で可愛らしくて、幸せそうで……同性ながらも、レイチェルはうっかり見蕩れてしまう。
「レイチェル?」
ぼーっと自分の顔を見つめている親友に、アンジェリークは首を傾げて声をかけた。
「しばらく逢わない間に、随分綺麗になっちゃったね……」
「ふふっ…ありがと」
小さく笑って礼を言うアンジェリークは、ふと目を伏せて今度は寂しげに微笑む。
紅茶の入ったカップを両手で持ちながら、零さないようゆっくりと回しながら。
その切なくもどこか艶のある表情に、レイチェルは再び目を見張る。
こんな顔を、今まで見た事があっただろうか――と。
自分でも気付かぬ内に、彼女を呼ぶ。
「……アンジェ…」
「ねえレイチェル……この宇宙、ううん、この聖地から、あちらの宇宙って、どっちの方向にあるのかしら………」
呟くように問われ、レイチェルは何も言えないままただ親友を見守る。
アンジェリークは静かにカップを置いて椅子から立ち上がると、部屋の窓から青く澄み切った聖地の空を見上げた。
その華奢な後姿から、アンジェリークが抱える言い知れぬ寂しさと、狂おしいまでの恋慕を、レイチェルは感じ取る。
だから、確かめるように言った。
「…あの方と、何か約束したんだね」
「……………うん」
「分かった。すぐに調べてくるね」
決して、どんな約束を…とは訊かないレイチェル。
その気遣いに感謝したアンジェリークは、早速王立研究院へ行こうとする親友の背中に、振り向いて声をかけた。
「本当にありがとう、レイチェル。大好きよ」
ドアノブに手をかけていたレイチェルは、振り返って明るく笑い返してくれた。
「それじゃ行って来るね!すぐに戻ってくるからさ♪」
「行ってらっしゃい。お茶のお代わりを用意して待ってるわね」
「はーい☆」
パタン、と小さく音を立てて扉が閉められると、アンジェリークは女王の私室に一人残される。
窓を開けて、外の爽やかな空気を取り入れる。
今日もこちらの聖地は爽やかに晴れて、遠くに緑色の緩やかな丘が見えている。
目を閉じると、まるで大地が優しい子守歌を歌っているように、穏やかで優しい息吹を感じる。
それは、アンジェリークがこちらの宇宙に帰ってくる前の夜、アリオスの死を悼んで泣き疲れた彼女の頭を、優しく撫で続けてくれた想い人の手の温もりにも似ていて――彼女の胸に、愛しさと切なさが再び込み上げてくる。
「ルヴァ様……」
――ねえ、ルヴァ様。
私の胸の中で芽生えたあなたへの想いは、日に日に大きくなって、花が咲き始めました。
どうか、遠く宇宙を越えて、あなたにこの花が届きますように。
そして……この宇宙からの星の光が、あなたを優しく照らしますように……………
-Fin-
〜後書きという名の言い訳〜
お題部屋に置いてある『眠れぬ夜にも〜』の、コレちゃん視点のつもりで書きました(^-^)
ブログで連日ルヴァ様のお誕生日をお祝いし続けてた中で出来た小話の一つで、7月7日の日記で書きました。
七夕ですね。その後「2007年ルヴァ様お誕生日パーティー会場」の投稿掲示板にも投稿させて頂きました。
ルヴァ様に毎晩新宇宙の方向を見ますと言われたら、コレちゃんだって毎晩ルヴァ様のいらっしゃる神鳥の宇宙の方向見てるでしょう。
遠く宇宙を隔てて想い合う二人の、静かで切なくて、でも強い絆を感じ取って頂けると嬉しいです。
2007.8.3 UP
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