―貴女の事が気になって生きた心地がしなかったもので、つい―
| それは想い人との恋が実って婚約したアンジェリークが、新宇宙の女王となった親友レイチェルの補佐官として故郷の宇宙を離れてからしばらく経ったある日の事。 「アンジェリーク様、あちらの聖地からアンジェリーク様にお届け物です。地の守護聖様から」 「いつもありがとうございます!あちらの皆様によろしくお伝え下さいね」 未だ守護聖はおろか人類が誕生していない新宇宙の聖地には、現在女王と補佐官、そして故郷の宇宙から借りてきた職員達が住んでいるのだが、広大なだけあって聖地内で様々なものを自給自足可能にしているとはいえ、こうして故郷の宇宙から荷物が届く事は少なくない。 それは職員達への家族からの手紙や贈り物であったり、聖地内だけでは賄えない品であったり、或いは故郷の聖地からの贈り物であったりした。 丁度本日の執務を終えたばかりだったアンジェリークはいつも荷物を届けてくれる職員に笑顔で礼を言いながら、大切な人からの贈り物が入った木箱を受け取った。 自分の部屋に戻って木箱をテーブルの上に置き、嵌めている婚約指輪に軽くキスを落として呟く。 「ルヴァ様……大好き♥」 「おーおー、お熱い事で。アンジェ、アナタ顔引き締めないと思いっきりにやけてるよ?」 「ちょっとレイチェル!いつの間に入ってきたの?!ていうか酷!!」 ノックはしたが返事が無かったとのたまう親友に、アンジェリークは溜息を吐きながら応じる。 「……まあ、いいけど。何か用事があるんでしょ?」 「うん。そろそろあちらの聖地に詳細なご報告をしようかなって。ホラ、ワタシ達って新しく宇宙を育ててるから、何かあった時にはすぐ相談していいって言われてるし。定期的に報告入れておいた方があちらとしても動きやすいと思うんだ」 「あちらへの詳しい報告書ならもう作ってあるわよ。こっちに来る前にルヴァ様が念入りに教えて下さったから大丈夫だと思うけど、これでいいか一応チェックしといてね」 アンジェリークが執務を終えてから別に作成していたという報告書は厚めの冊子になっていたが、流石に故郷の宇宙で知恵をもたらすという地の守護聖がみっちり指導しただけの事はあり、パラパラと目を通しただけでも分かりやすくまとめてあった。 「これなら十分だよ。すぐにでもご報告に行けそうだね♪」 「ふふっ良かったvそれで……誰に行って貰うの?」 「ワタシはまだここを離れられないから、アンジェが行ってくれると助かるんだけどね。正式な報告会だし、女王陛下やロザリア様に直々にお会いするんだからってのもあるけど、今後定期的に行って貰うつもりだから……アンジェも時々はあの方に逢いたいでしょ?」 「レイチェル……………ありがとぉぉぉ!!愛してるわ!!!」 感極まってヒシッと抱きついてきたアンジェリークに苦笑いを零し「それはルヴァ様に言ってあげなよ〜」と返すレイチェル。 先ほどからテーブルの上に置かれたままの木箱を指差す。 「ところで早く開けた方がいいんじゃない?中身が何か分かんないし、お礼だって言いたいでしょ?」 「キャッ!忘れてたわ!!」 今ここには居ない恋人に小さく謝りつつアンジェリークが箱を開けると、入っていたのはアジサイの鉢植えだった。 「「………………………」」 二人とも微妙に顔を強張らせながら、他に手紙か何かが入ってないかと探ってみるも見つからず。 「………ね、ねぇレイチェル。アジサイの花言葉って確か……」 「えぇーっと、ワタシが知ってる限りだと『移り気』『高慢』『あなたは冷たい』『無情』『浮気』って意味だねー…」 「あーんっっやっぱりぃぃぃ〜?!」 博識な親友に自分も知っている通りの意味を告げられ、アンジェリークは涙目でパニックに陥る。 「何で何で何でどーいう事なのよおおぉぉぉっっ!!?私が浮気したって言いたいの?そ、それともまさかルヴァ様他に好きな人が出来たって事?!!!いっっやあああぁぁぁぁぁ…」 一応プライバシー保護の為に謁見の間とその周辺にある女王や補佐官の私室及び執務室は特に防音がしっかりしているとはいえ、今のアンジェリークの叫びは宮殿中に響き渡ったのではなかろうか…と両耳を塞ぐレイチェルは思った。 「だああもうっ!!落ち着いてよ!!!だったら今すぐあっちの聖地に行って確かめてくればいいでしょ?あちらももう執務は終えてらっしゃる頃だし、陛下とロザリア様には私からお手紙書くから!!」 レイチェルはずきずき痛む頭を押さえながら泣き始めた親友を叱咤激励し、職員にはすぐさま故郷の聖地に次元回廊の使用を伝えるよう指示すると、早速女王宛の手紙と先ほどの報告書をアンジェリークに持たせて次元回廊に引っ張っていく。 「ひっく…うぅっっルヴァ様ぁ〜…」 「分かった、分かったからとりあえず泣き止んで。こっちの事情がどうあれ陛下とロザリア様にお会いするんだから、ちゃんとしてなきゃ失礼でしょ?」 「………うん…ごめんねレイチェル。ご報告はちゃんとしてくるから、大丈夫……」 涙を拭いて力無く微笑むアンジェリークが次元回廊をくぐったのを見送ると、レイチェルは誰に言うでもなく呟いた。 「まあ、浮気とかじゃなさそうだけどあの方だしなぁ〜絶対に裏はあるよね……こっちの反応も最初から見越してると思うんだけど………だってルヴァ様だし」 親友の恋人が何か企んでいたとしても、彼があの子を大切に思っているのは嘘ではないと判っている。 本気でアンジェリークが悲しむような事はしないはずだ。多分、おそらく。 鍵はアジサイに込められた意味ではないかと思ったレイチェルは、アジサイに纏わる話や花言葉を調べに宮殿へと戻って行ったのだった――― アンジェリークから渡されたレイチェルの手紙で事情を知った女王とロザリアは、明らかに元気を無くしながらもどうにか新宇宙の近況報告を終えた彼女を励ます。 「定期報告会の件は了解したわ。だから…ね、元気出してアンジェリーク。ルヴァにもきっと考えがあったのよきっと」 「そうそう、私たちが知る限り彼が他の女性とどうこうといった事は一切無いし、そう簡単に心変わりをする性格でも無いと思うのよ」 「陛下、ロザリア様、ありがとうございます。私、あちらに戻る前にルヴァ様とお話してきますね」 「ええ、じっくり話し合って頂戴。あなた達がちゃんと分かり合えるまでこっちに居てくれて大丈夫だから」 既に彼は自分の邸に帰っていると教えて、アンジェリークの乗った馬車を送り出した後、ルヴァの性格を知る女王と補佐官は口を揃えて言った。 「「ルヴァもとんだ人騒がせね……」」 と、おおよその見当はついている表情で。 アンジェリークが恋人の居る邸に到着すると、出迎えた家令を勤める老人は何も聞かずに微笑んだ。 そのまま主の私室へと案内される道すがら、アンジェリークはおそるおそる訊ねてみる。 「あの、驚かないんですか?新宇宙に居るはずの私が連絡も無しに突然こちらにお邪魔して……」 「ルヴァ様から、きっと貴女様が近い内にいらっしゃるから準備をしておくようにと仰せ付かっておりました」 「え………」 話している内に目的の部屋の前に辿りつく。 ノックの後柔らかな声で家令がアンジェリークの訪問を伝えると、聴きたくて堪らなかった優しい声が返ってきた。 「どうぞ、入ってくださいねー」 「アンジェリーク様、それでは私めはこれで……」 「あっありがとうございます!」 不安と緊張と逸る気持ちに大きく感じる鼓動を深呼吸で落ち着かせ、アンジェリークはゆっくりと部屋に入る。 そして、視界に入るなり全ての神経が、その人に集中していくのを感じた。 「お久しぶりですねー。逢いたかったですよ、アンジェ」 大好きな眩しい笑顔、優しい声、そして―――自分を待つ、広げられた両手。 「ルヴァ様ーっ!!」 抑え切れない気持ちのまま抱きつくと、しっかりと受け止めてそのまま抱きしめられる。 愛おしい温もりをしっかり味わいたくて、アンジェリークは目を閉じる。 先程までの不安が全て消え去っていくのを感じる。 「ただいま、ルヴァ様………すごく、逢いたかったです」 素直に気持ちを伝えると、柔らかく笑う気配がした。 ゆっくりと、労わるように優しく、髪を撫でられる。 「おかえりなさい、アンジェ。貴女がお元気そうで、本当に良かった……」 久々の再会を喜び合う恋人達を、その頃遠く離れた新宇宙で心配していたレイチェルは、ようやく正解に辿りついた。 おそらくルヴァが本当に込めたであろうアジサイの花言葉は……… 「『辛抱強い愛情』…ね。まあ、ルヴァ様としては結婚が当分お預けだしあまりアンジェと逢えないから仕方ないとはいえ………絶対、誤解招くように仕向けたでしょ。あの子に逢う為に……」 親友の心配性な恋人の為にも定期報告会を提案しといて良かった…と、レイチェルが内心胸を撫で下ろしたのは言うまでも無い。 -Fin- 〜後書き〜 ブログ再録一部修正なルヴァコレ(勝気ちゃん)SP2後のお話でした。タイトルは勝気ちゃん相手に言い訳するルヴァ様のセリフという事で。 勝気ちゃん相手に告白した時のルヴァ様いわく「あなたの事が気になって気になって…生きた心地がしないんです」 うん、生きた心地がしないならこんな手段に訴えてもおかしくは無いですな(何) SP2のLLED後で婚約済みだったら、既に「ただいま」「おかえりなさい」が言える関係ではないかなと思います。 もしこのお話のコレちゃんが温和ちゃんだったら、こんな早合点はしないでしょうが逢いに来るのは変わらないかと。 そして関俊彦さん、お誕生日おめでとうございます!! 2011.6.11 UP |
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