―それすらも、君の一部なのだから―

ゼノンが着替えをしていると、突然フィレスに抱きつかれた。
いきなりの事で驚きながらも「……フィレス?」と声をかけてはみたが、彼女は何も言わず、腕の中にゼノンを閉じ込めたまま彼の肩に顔を埋める。
どうしたものかと思いあぐねている内に、ふと、彼女の手が小刻みに震えているのに気づいた。
部屋が寒いのかとも思ったが、大陸北部の生まれ育ちのフィレスより寒さが苦手なはずの大陸南部出身のゼノンの方が薄着をしていても、別段寒さを感じる事も無い。
それでも心配になって、聞いてみる。

「フィレス。寒いのかい?」
「ううん……」

顔を上げて答えるフィレスの表情は、微笑みながらもどこか憂いを含んでいた。
そして思う。果たして自分は、彼女の満面の笑みを一度でも見た事があっただろうかと。
エインフェリアに選ばれる前の生では、二人は志を同じくしながらも敵同士だった。
戦乙女に選定されてから解放されるまでの日々は、お互い不死者や神々との戦いに明け暮れていた。
そして再び人としての生を送ることを許された二人は、紆余曲折を経て結ばれた。
今まで自分に向けられた彼女の笑顔は、曇りの無い笑顔と言えただろうか―――…
思わず、問いかける。

「辛い?」

フィレスはゼノンを抱きしめたまま、無言で首を横に振る。
違うの、と呟いて彼女は腕の力を強める。

「幸せだと思ったの……貴方とこうして一緒に居られる事が。だからちょっとだけ……………不安になったの」

寂しげな笑顔で告げる彼女を見て、ゼノンはかつて自分がフィレスに誓った事を思い出した。
それは、彼女の抱える過去ごと愛する事―――フィレスの心に今も生き続ける前の生での彼女の夫や、エインフェリア仲間でもある彼女の娘を始め、彼女に纏わるあらゆるものをあるがままに受け入れる事だ。
彼女の不安が何に由来するのかは、はっきりしない。
それでも………自分の想いを伝えることなら出来るから。

「……ゼノン?」

フィレスが僅かに驚く気配がする。
彼は彼女の手の片方をとって、その指先に口付けたのだ。
そのまま腕を引き寄せ、自分の腕の中に愛しい温もりを閉じ込める。

「彼が今も君の中で生き続けていても構わない。俺は月ごと太陽を愛すると…他の何者でも無く、君に誓ったのだからね………」

そう告げてフィレスの髪を撫でると、微かに日向の香りがした。


-End-


〜言い訳〜
うををーっゼノフィレぇぇっっっ(←落ち着け)
『月と太陽』シリーズで途中経過をすっ飛ばし、結ばれた後同居し始めて間もなくの二人の心境を描いてみました。
心の中で生き続けるシフェルごと愛する覚悟が無いと、フィレス様は多分落とせない(^^;)
ブログでは私のゼノフィレ絵と一緒にUPしてました。画力足り無くて本来の服が描けなかったのですが。
興味のある方はブログの「バトン」カテゴリの口説き文句バトン回答その2『月』からどうぞ。
自分では何となくこのゼノフィレ話が、南こう●つの「神田川」を彷彿とさせるのですが……
小さな石鹸をかたかた鳴らしてるのは、ずばりゼノンの方ですね(断言)
それでもゼノン好きですよ、念のため(^^;)
2007.12.21 UP

ここまで読んで下さってありがとうございます

ブラウザバックでお戻り下さい