―水の中の月―
| それはアンジェリークが女王となってから初めての、秋も終わりに近い肌寒い夜。 ニクスは陽だまり邸の敷地内にある泉の側に腰を降ろして、夜空を見上げていた。 星々が輝ける空にかかっているのは、上弦の月。 これからどんどん膨らんで、やがては満月となる半月だ。 (皆さんも今頃は、どこかでこの月を見ているのでしょうね……) 陽だまり邸でオーブハンターとして共に暮らした仲間たちも、女王となって天空の聖地からアルカディアを見守り続ける彼女の助けとなる為、それぞれの場所へと戻っていった。 現在邸に住むのは、主であるニクスただ一人。 ずっと共同生活が続いていたせいか、邸がやけに広く感じる。 「アンジェリーク……女王となったあなたが居る天空の聖地は、この空のどの辺りにあるのですか………?」 ニクスはそっと、今この場に居ない大切な少女に語り掛ける。 オーブハンターとして共に暮らしていく中で二人は想いを通わせたが、諸悪の根源たるエレボスを倒した後、アンジェリークはこの世界の女王となって彼の元から飛び立ってしまった。 半分ぽっかりと欠けた月は、今の彼の心の内を表しているようだ。 晩秋の夜風で体が冷えるのも構わず、ニクスは天使を意味する名を持つただ一人の女性を想い、空を眺め続けていた。 ふと、視界にキラキラと輝く何かが見えた。 月でも星でもないそれは、冷たい夜風に飛ばされながらも、空からゆっくりと舞い落ちてくる。 「羽…いや、葉でしょうか……」 小さな輝きはひらり、ひらりと、ニクスの目の前に広がる泉の中心に落ちた。 その途端、眩い銀色の光が辺りに満ちる。 眩しさに目を覆ったニクスは、光が消えて目を開けた次の瞬間、己の目を疑った。 「!……アンジェ…リーク?!」 泉の中心には、淡く浮かび上がるアンジェリークの姿。 彼女は陽だまり邸にある女王を描いた絵と同じドレス姿で、背には金色に輝く一対の翼が生えている。 向こう側の景色が透けて見える事から、やはりこれは幻だと分かった。 思わず手を伸ばしかけたニクスに愛しい天使は可憐に微笑むと、澄んだ碧の瞳で真っ直ぐこちらを見つめ、口を開く。 ”ニクスさん……どうか、幸せになって下さい。私はずっと、聖地からこのアルカディアを見守っていますから………” それだけ言うと、彼女の幻はどこか淋しげな微笑を浮かべて、音も無く消えた。 「………全く、あなたという人は……目の前にあるのに決して届かない、水の中の月ですね」 ニクスはアンジェリークの姿があった泉の中心に映る月を見て、儚く微笑む。 伸ばしかけた手をぐっと握り締め、天空にかかる月を仰ぐ。 おそらくこの先、二人が再会する事は無いだろう。 そして、彼女はたった一人で永き時を生きるのだ――知る者が誰一人居なくなってからも、ずっと………エレボスに取り憑かれたニクスが、かつてそうであったように。 ニクスは以前自らが立てた誓いを、改めて誓った。 「私も祈り続けていますよ……あなたとアルカディアの幸せを、あの時からずっと……ね」 たとえこのまま永久に逢えなくなったとしても、今、私に出来る限りの事をしよう。 二人で語った夢の為に、そして、誰より大切なあなたの為に… あなたが未来を信じて歩み続けられるように。 この地があなたの陽だまりであり続けるように……… -Fin- 〜言い訳〜 私にとって「水の中の月」はこんなイメージでした。 アンジェはニクスさんのような悲劇を繰り返させない為に、あえて女王になったという設定です。 ニクスさんとの恋愛を進めていくなら、彼にとってトラウマとなってる海に行く必要があるんですよね(苦笑) 何回行ったかな「願いの渚」……2回は確実にニクスさん連れて行かないと、恋愛進まないので。 恋愛段階3で止まっているという事は、古傷抉るのを躊躇った結果かと。 楽しんで頂ければ幸いですm(_ _)m 2007.10.28 UP |
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