―星降る夜に願いをかけて―

爽やかに晴れた宮殿の一室で自分宛の手紙に目を通していた金髪の少女は、最後に書かれていた一文に頬を膨らませて一緒にお茶を楽しんでいた青く長い髪の親友に不満を漏らした。

「……『陛下にも、星に祈りたいような胸に秘めた想いはありますか?』ですって。まったく酷いと思わないロザリア?セイランったら私の気持ちを知らない訳じゃないのに」
「落ち着いてアンジェリーク。あの彼がわざわざ星祭り、それも恋人達の伝説について詳しく教えてくれるという事は………あなたの気持ちを確かめたいという事じゃないの?」

二人のカップが空になっているのに気付いたロザリアが手際良く新しいお茶を注ぐと、アン
ジェリークはお礼を言って気持ちを落ち着かせる為にゆっくりと味わう。
そういえば話題にしている彼は薄めの紅茶が好きだったと、ほんのちょっぴり懐かしく思う。

セイランは今、この聖地から先ほど守護聖たちが出かけていった惑星ユータイドの小都市イステルに居るらしい。
アルカディアの事件を終えたばかりで疲れているだろう守護聖や教官、協力者たちに休暇を与えようと招待したのは更に数週間ほど前の話で。
アンジェリークの恋人は、人から受け継いだ別荘があるからと辞退の手紙を寄越して来たのだった。
せめてものお詫びにと、イステルで冬至の日に行われる星祭りやそれに纏わる言い伝えを書き添えて―――

「………本当はね。今現在の私の気持ちは信じてくれてる、それは分かるのだけど。でも、
あの人は……未来の私の気持ちまでは信じてくれていないとも思うの」
「女王であるあなたが、それでも一人の女の子として願いをかけたい程の想いかどうか……それが知りたいのかもしれないわね」

ロザリアの言葉に、そういえばアルカディアの夜想祭のオーロラに願いをかけた時は、結局女王として皆の幸せを願ったのだと思い至る。
自らの力で出現させたオーロラに願いをかけるというのもおかしな話かもしれないが、先の見えない日々だったからこそ、そう願わずにはいられなかった。

「で、どうするのアンジェリーク?遠まわしにあなたを誘ってるみたいだけど」
「勿論行くに決まってるじゃない♪新宇宙の二人にも伝えてあるし、ロザリアだってシャトルの手配は済ませてくれてるんでしょ?」
「ええ。明日あの子たちがこちらに到着次第、出発できるようにしてあるわ。ただやっぱり、
守護聖たちには伝えておいた方がいいんじゃないかしら……」

後の面倒を考えると連絡しておいた方がいいのだと、聖地の人間関係で幾度も頭を悩ませてきた補佐官ならではの提案ではある。
ジュリアスあたりはまず反対するだろうが………いざという時には手を貸してくれそうな者
だって何人か居るはずだ。

「そうね。じゃあ私から連絡しておくわ」
「ちょっと不安だけど………まあ、お願いね」



ロザリアの不安は的中した。
アンジェリークら四人がイステルに到着するなりシャトルの発着場まで迎えにきたジュリアス達に、守護聖や教官、協力者達が休暇中に宿泊しているホテルに連れてこられ、帰りのシャトルの手配が出来るまで部屋から出ないよう厳しく注意されたのだった。
人一倍責任感の強い首座の守護聖はしおらしく話を聞いている四人に、今後同じ事が起こらない様更に話を続けようとしたのだが―――

「あー…ジュリアス。陛下たちも反省してらっしゃいますし、シャトルの長旅でお疲れでしょう。この辺で切り上げて貰えませんかね?」
「ルヴァ、そなたは甘いぞ。そうやって陛下たちを甘やかしてはかえって為にはならぬと………」

尚も言い募る彼を制するように、微笑みを浮かべた穏やかな表情から真面目な顔付きへと変わる。

「それに私も新宇宙の近況について二人と大事なお話がありますからねー。王立研究院からのデータではまだ問題はありませんけど、色々と確認したい事もありますし……何か気になる事があれば、貴方にもちゃんとお話しますからねー」
「…そうか。ならば後はそなたに任せよう……頼んだぞ、ルヴァ」

部屋から出て行くジュリアスを見送ると、四人の視線が残ったルヴァへと集中する。

「さて……どうしたものでしょうねー」
「ルヴァ。この子たちは私がつき合わせたんだから、あまり追い詰めないで頂戴」

少なからず緊張しているのは新宇宙の二人。
彼女たちを妹のように可愛がっているアンジェリークとロザリアは、かばう様に前に出る。

「大丈夫ですよ陛下。ああ、アンジェリークもレイチェルもそんなに緊張しなくていいですからねー。私はお説教しに来た訳じゃありませんし、貴女方が大切に守り育てている新宇宙です。しばらく離れていても問題無いと判断した上でここに来たんでしょうしね」
「それは勿論です、ルヴァ様」

新宇宙の女王である栗色の髪のアンジェリークがはっきりと答える。
隣に居るレイチェルも力強く頷く。
二人の瞳を見ても嘘をついているようには見えない。

「新宇宙に関して気になる事が無い訳ではありませんが、今はまだ聖地の王立図書館で宇宙の創世期の文献を調べている段階です。何か分かればすぐにお知らせしますから、ここでお話するような事はありません。安心してくださいねー」
「「ありがとうございます!」」

新宇宙の二人を安心させるように微笑むルヴァに、彼女達はほっとした笑顔を見せる。
彼が本当の事を言っているなら、新宇宙の話題はジュリアスのお説教を切り上げさせる為の口実だったという事になるが……
他に話したい事がある様に感じたアンジェリークは、続きを促す。

「それじゃあ……貴方は私たちに何を話しに来たのかしら?」

お茶を飲みながらとりとめもない世間話をする時のような口ぶりで、宇宙に知恵をもたらす地の守護聖は話す。

「………星祭りの事なんですけどね、星の妖精の合唱隊の歌声はとても素晴らしいそうですよー。今はこのホテルを兵隊が取り囲んでいるせいでホテル周辺だけ避けて通っているようですが……星の妖精たちは皆イステルの民族衣装を着てフードを目深にかぶっているので隣に居る人の顔も分からないそうですけど、大体は子供かあなた方と同じ年頃の少女たちだそうです。警備責任者のオスカーに頼めば、もしかしたらホテルの前まで呼んで貰えるかもしれませんよ。直接お願いすると流石に彼も警戒するでしょうけどねー」
「ルヴァ様、それって……」

星の妖精の合唱隊をオスカーに人づてに頼んでホテルの前まで連れてくれば、星祭りに参加できると教えている。
警備の者にも誰にも彼女達の素性がバレずに済む方法まで。

「つまりそれを着て合唱隊に紛れ込んでしまえば、星祭りに参加できるという事ね」
「ええ。オリヴィエが貴女方へのお土産に買っていた民族衣装を、その内持って来ると思いますよー。彼が言うには街行く人皆似た様な衣装を着ていたそうですし、地元の人間にも気付かれないかと……」

ロザリアが確かめるとにっこりと肯定する。

「問題は部屋の前に居るヴィクトールとホテルの周りの兵士達じゃない?いくらなんでも見咎められるでしょう」
「ヴィクトールが持ち場を離れるなんてこと、普通はありませんけどねー。警備にしても何分急な事ですから、手薄なところもきっとあると思いますよー。ふふ……私はそれについては知りませんけど、気まぐれな水晶球なら知ってるかもしれませんね」

気まぐれな水晶球――その単語で浮かんだある人物の名を、アンジェリークは口にする。

「……クラヴィスも協力してくれるというの?」
「私からはっきりと申し上げる事はできませんよー。ただ、もしクラヴィスがヴィクトールを連れ出した隙に皆さんが部屋から居なくなってしまったら………彼はジュリアスに問い詰められても持ち場を離れたとは言えないだろうとは思います。ヴィクトールにはちょっと気の毒ですけど、話の分かる人ですからきっと何も言わないでおいてくれるでしょうね」

あくまでとぼけた笑顔でとんでもない事を話し続けるルヴァに、レイチェルは背筋が薄ら寒く感じた。

「な、何だかルヴァ様が怖い………いや、腹黒いだろうなとは内心思ってたけど!」
「レイチェル、それは禁句よ。心の声が出ちゃってるわ」
「二人とも、後で補佐官の心得についてもう一度じっくりお話した方が良さそうですねー…」

笑顔のまま不穏な気配を漂わせ始めたルヴァに、補佐官の二人は内心冷や汗を垂らす。
その状況を破ったのは栗色の天使の言葉だった。

「ルヴァ様は今私たちの為に色々助言して下さってる訳だし……そんな言い方あんまりだと思います」
「ありがとうアンジェリーク。貴女は本当に素直で優しい人ですねー」

一瞬で和やかな雰囲気に戻った彼の本当の恐ろしさを知る二人の補佐官は、栗色の髪の
アンジェリークへある種の尊敬の念を抱く。
話が脱線したので、アンジェリークが咳払いをして軌道修正する。

「ところで本当にいいの?あなたが私たちにそんな入れ知恵しちゃっても」
「ええ。もしダメだったとしてもこの部屋の窓から夜空を見る自由くらいはありますし、上手くいくかどうかは分かりませんけど。陛下とセイランのおかげで、次にいつ会えるか分からない新宇宙の二人にも会えましたからねー」
「………バレちゃったのね」
「時期的にも陛下に直接連絡できる人間の中では彼しかあり得ませんし、エルンストが偶然ですけど彼に会ってますからね」

セイランからの手紙には彼が居るはずの場所も記されては居たが、気まぐれな彼が今もその別荘に居るのかどうかもアンジェリーク達がイステルに来た事がその耳に入っているのかどうかも、現状では彼女達には知りようが無い。
それでも彼が確かにイステルに居るのだと聞くと、胸の奥が温かくなる。

「それに……私は正直気が引けていたんですよ。アルカディアで最も頑張っていたのは貴女方四人だったというのに、私たちだけ休暇を頂いて。 貴女方にもたまには普通の女の子のように楽しんで欲しいと思うのは、彼だけでは無いという事です」

何やら賑やかになってきたのでルヴァが部屋の外に耳を傾けると、ヴィクトールとメル、それにマルセルの話し声が聞こえてきた。
そろそろここから立ち去らなければ、彼らに怪しまれてしまうかもしれない。

「それではメルとマルセルが来てますから、私からのお話はここまでです。二人とも貴女方を元気付けたいようですからねー」
「あの、ルヴァ様…」

ドアノブに手をかけたルヴァに、栗色の髪のアンジェリークがその透き通る青緑の瞳を切なげに揺らして近づく。
アルカディアの事件が解決した後、それぞれ違う宇宙に属する彼らは別れる前に互いの想いを全て伝え合っていた。
彼女の左手には、ルヴァが大事にしていた指輪が嵌められている。
振り返って恋人の表情と胸元で祈るように組まれた手――その薬指に光る贈り物を目にした彼は、優しく囁くように告げた。

「……アンジェリーク。今夜は新宇宙の代わりに、一生に一度あるか無いかの流星群を見ますから……貴女も見られるといいですね」
「!…はい。今日はこちらの聖地の代わりにイステルの夜空を………ルヴァ様も、楽しんで下さいね」

宇宙を隔てた恋人達が確かめたのは、二つの約束。
今夜同じイステルの流星群にそれぞれが願いをかけるという、そして―――長く苦しい旅の末に二人が交わして以来守り続けた……
アルカディアで離れ離れになった後も互いに変わらぬ想いを抱き続けている事を知った
ルヴァは、陽だまりのように笑う。

「ええ、必ず。それじゃあ、私はこれで……」
「ルヴァ様……」

ルヴァが出て行った扉を見つめる栗色の髪の天使から少し離れた所で、二人の話を聞いていた他の三人は彼女の恋が実っていた事を知り感慨深そうに頷き合う。
レイチェルは特に女王候補の頃から彼女の傍でその恋を見守っていただけに、我が事のように目に涙を浮かべながらも喜んでいた。
―――もっともレイチェルは既に新宇宙に戻った時に親友から聞かされていたのだが、実際に恋人らしい二人の様子を確認するまでは心配だったのだろう。
それにしても―――と、栗色の髪の少女を除く三人は思う。

(女王試験の頃から比べると随分大胆になったねールヴァ様。ま、アンジェを幸せにして下さるなら文句は無いけどね☆)
と心の中で呟いたのは彼女の親友のレイチェル。
「二人ともおっとりしてるから仕方ないのかもしれないけど、彼女が女王候補の頃からだから結構かかったわよね……」
「見ていてもどかしかったわ〜。恋人同士になる頃には二人とも髪の毛真っ白になってるん
じゃないかって思うくらい」
溜息交じりに呟いたのはロザリア、割とひどい事をさらっと言ったのは金髪のアンジェリークだ。
勿論、もう一人のアンジェリークには聞こえない程度の声だったが。

(何はともあれ、この二人が上手くいって良かったわ。私も負けてられないわね)

アルカディアでの彼らの様子を見ていた限り二人が結ばれるのは時間の問題だろうと思って、あまり心配はしていなかった。
生きる時間の流れが同じなら、いつかは道が交わることもあるだろうから。
少なくとも、生きる時間の速さが違っているよりはチャンスは多いはずである。
でも………自分とセイランは。
夜想祭のオーロラを二人きりの部屋で眺めながら、自分を腕に閉じ込め温もりと想いを分かち合っている間も、きっと彼はその違いを感じていただろう。自分と同じく……
自分にとっては勿論だが、いつぞや彼が言った言葉を信じればセイランにとってもお互いが生涯唯一人の相手だから、甘い時間も焦がれるほどに苦しい胸の痛みも切ない二人の距離も、全て受け入れてきたけれど―――…

(私、来たわよ。あなたの誘いに乗って……)

自由を愛する彼を本当に愛しているからこそ、傍に無理やり引き止める事が出来なかった。
今まで幾度か彼を含む協力者達を聖地に招いたり協力を求めた事はあったが、来るかどうかの判断はあくまで彼らに任せてきたつもりだ。
もっとも、王立研究院に所属するエルンストと王立派遣軍に所属するヴィクトールにすれば女王の命令として、選択肢は無かったも同然だろうが。
もし………夜空を埋め尽くすほどの流星にありったけの願いを託して、一人の女の子として彼との未来を望んでもいいなら。
彼がそれを束縛と感じないのであれば―――…

(だからこそ誘ってくれたと思っていいのよね?セイラン……)

胸元に手を置くと、気まぐれな恋人が気まぐれにくれた指輪の感触が服越しに伝わる。
執務服のドレスを着ている時などは、こうして細い鎖に通して身につけているのだ。
一人物思いに沈むアンジェリークを気遣って、他の三人も心配そうに様子を伺っている。
彼女達を元気付けようと部屋を訪れたマルセルとメルは、四人が星祭りに参加できずに意気消沈していると都合良く解釈してくれたが。

(逢いたいわ…あなたに)

ふと、綺麗な音が耳に入ってきた。
アンジェリークは外から微かに聞こえてきた音に、先ほどのルヴァの助言を思い出す。

「星祭りに参加できないなら、せめて………星の妖精の合唱隊の歌声を、近くで聴いてみたいわ」
「陛下……分かりました。僕とメルでオスカー様にお願いしてきますね」
「必ず呼んでもらいますから、元気出して下さいね」

落ち込む四人をようやく元気付けられそうだと安心した表情を浮かべる二人に、女の子達は僅かに良心が痛んだが。

(ごめんなさい、二人とも……でも、ありがとう)




ルヴァの言葉通りに四人分の民族衣装を持ってきたオリヴィエの手引きでホテルの外に出た時には、既に辺りは暗くなっていた。
町の照明でいくらか見えにくくはなっているようだが、時折星が尾を引いて流れていた。
マルセルとメルがオスカーに頼んでくれたおかげで、ホテルの前に呼ばれた星の妖精の合唱隊に混ざる事が出来た。
警備している兵士たちや地元の人間に気付かれないように、四人はひそひそ声で話す。

「わぁ…すごい人数だわ。これから皆で流れ星をおもてなしするみたいよね」
「今日の流星群は、一生に一度あるかないかってルヴァ様がおっしゃってましたから…もっと暗くなってからが楽しみですね」

興奮を隠し切れずに空を見上げる二人のアンジェリーク。
栗色の髪の親友の言葉に、レイチェルはにやりと笑って隣の少女を肘でつつく。

「そういえばアナタさっきルヴァ様と何話してたのー?」
「もうっ!レイチェルったらからかわないでよ〜」
「あらあら……うふふっ」

アンジェリークとロザリアは可愛い後輩達のじゃれ合いを微笑ましく眺める。
ロザリアが何気なく出てきたホテルに目を遣ると、見慣れた後姿が視界に入った。

「あれは………セイランだわ。ほら、今ホテルに入っていった人」
「え?……彼がホテルに来たの?」
「ええ。あれは確かに彼の後姿だったもの。外に居たオスカーと一緒に中に入ったわ」

自分達を部屋から連れ出してくれたオリヴィエは、リュミエールがエルンストを連れてセイランを探しに行ったと言っていた。
会いに、来てくれたのだろうか。

(後できっと、逢えるわよね…?)

今まで幾度か何らかの理由で彼を含む教官達や協力者達を聖地に呼び寄せたが、セイランが自分に一度も逢わないままでどこかへ行ってしまった事は無かったように思う。
今回はセイランが自分達をここに呼んだようなものだったが―――訪れた時には既に部屋から抜け出していた事を、彼はどう思っただろう?
確か彼が教えてくれた星祭りの伝説では、星が流れる間に愛を誓い合った恋人達はどんな困難も乗り越えて必ず結ばれるとあった。
だからこそセイランは、わざわざホテルまでやってきたのではなかったのだろうか……
ホテルに戻って彼の姿を確かめたいという思いはあったが、それではせっかく協力してくれた人たちの好意を無駄にしてしまう。
自分が戻ってしまえばセイランには会えるかもしれないが、一緒に抜け出してきた三人まで自分に気を遣って戻ると言い出しかねない。

「陛下」

可愛い後輩女王の声で、いつの間にか物思いに耽っていた事に気付いたアンジェリークは笑顔で振り向く。

「なあに?アンジェリーク」
「………今日だけは、普通の女の子に戻ってお願いしちゃってもいいと思います。私も人の事は言えないんですけど……」
「セイランがせっかく教えてくれた二度と無いチャンスだし、それを進んで手放す事は無いものね」

彼が教えてくれたイステルの流星群と恋に纏わる伝説。
手紙を書いた時のセイランの気持ちは今のところ推し量る事しか出来ないが、自分と同じ想いだと信じたかった。
彼は今、傍に居ないけれど―――

ちゃんと笑えてなかったのだろうか。
心優しい彼女が心配そうな顔で何か言いかけたが、それは町中に鳴り響いた鐘の音にかき消された。
鐘を合図に、イステルの町の照明が全て消える。
辺りを照らすのは、星の妖精たちが持つキャンドルの灯りだけ。
標のように妖精たちの灯りが道なりに連なっていた。
星の妖精たちが、一斉に歌い始める………

〜〜♪〜〜♪〜〜♪〜〜♪

妖精たちは厳かに、心を込めて、夜空に向かって祈るように歌う。
星の光を遮っていた町の明かりが消えた為に、流星が先ほどよりもはっきりと見える。
地上の星たちの歌に、祈りに、応えるように、次第にその数が増えていく―――…

「本当に、歌で流れ星をおもてなししてるみたいだわ……なんて綺麗…」
「ええ。一時はどうなるかと思ったけれど、此処へ来て良かったわ……」

アンジェリークはロザリアと微笑を交わす。
新宇宙の二人も、美しい流星群を見上げて幸せそうな笑顔をしていた。
不意に栗色の髪のアンジェリークと目が合う。
彼女は見る者の心を安らげるような柔らかな微笑みを浮かべ、胸の前で両手を組んで祈るように言った。
その左手の薬指には、新宇宙から彼女が来た時からずっと大切に嵌めている指輪が変わらずにあった。

「離れていても二人の心が一つなら……並んで夜空を見上げて星に願いをかけるのと同じだと思います」
「アンジェ……」

レイチェルは目の前で微笑む親友の言葉に、彼女が故郷の宇宙での長く厳しい旅を終えて帰ってきた日に自分に訊ねてきた事を思い出す。
その時の彼女は、とても切なそうで抑え切れない程の恋慕を滲ませていたが―――今は本当に幸せそうだ。
アンジェリークは昼間の彼女とルヴァの様子から言わんとする事を察し、その優しさに感謝する。

「ありがとう、アンジェリーク。あなたがそう言うならきっと、そういう事なのよね」
「はい!」
「………あれ?ホテルのテラスから灯りが……あれは確か、私たちの部屋のある辺りだったはずですよねロザリア様?」

レイチェルがホテルを指差す先には小さな灯りが一つ、照明が落とされたホテルに見えた。

「本当ね。皆あそこから星を見てるのかしら?」
「……ふふっ。私たちやここに居る人達への、皆さんからの祝福かもしれませんね」
「じゃあ私たちも星にお願いしましょう。この素敵な夜に感謝して……ね♪」
「「「ええ!」」」

少女たちの願いは、今夜訪れた一生に一度の流星群に託された。
その想いが叶うかどうかは、まだ誰にも分からなかった。
それでも―――願いを胸に、彼女たちはこれからも歩んでいく。
離れていても、心通わせる相手と想いを一つにして同じ夜空に願いをかけたのだから………


-fin-



〜後書きと説明〜
ブログで七夕っぽいネタとしてドラマCD『LOVE CALL』収録のお話からの妄想を小話にしました。
サイトへは再録の際にチェックし直して表現が分かりにくい所などを修正してUPしております。
「アルカディアで別れてから〜」という発言がCD内であるのですが、多分公式では恋愛無しのムービーED前提ぽいので、次元の狭間が小宇宙に変化してアルカディアが今もそこに残ってると判明する前だと勝手に解釈して話を書きました。
なのでトロワの最上恋愛EDのムービーの前にこんな事があったと当サイトでは解釈しております。
でもアルカディアで日向の丘での告白イベント後、ゲーム内では表現されてないだけでルヴァ様がターバン外した姿は見ててもおかしく無いかなと。
ルヴァ様から贈られた指輪は、プレゼントされる前まではルヴァ様が大事にしてた指輪としてゲーム内では他の
キャラに知れ渡ってるようですが、女性陣は知ってるかどうか確認出来ないので知らないという事にしてます。
それについての話もいずれ書きたいですね。
さて、次はルヴァ様のお誕生日ネタですね!!まだ本文書けてないけど!!!(汗)

2011.07.10 UP

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