-笑顔を見せて-

「今日は良く晴れていますね〜。お弁当を持って出かけるのに、もってこいのお天気です」
爽やかに晴れ渡った青空を、窓のガラス越しに嬉しそうに眺めながら呟く一人の青年。
ブルーグリーンのサラサラした短髪に白いターバンを巻き、モスグリーンの長衣の上に白いロングベストの服を纏った彼の名をルヴァという。
この宇宙を統べる女王に仕え、人々に知恵を与える地の守護聖というのが彼の役割である。
彼が今居るのは女王の住む聖地の宮殿にある、地の守護聖の執務室――彼の仕事場だ。

ちなみに今日は日の曜日……つまり、休日のはずである。
休日出勤なのにも関わらず、彼が嬉しそうにしているのは勿論理由があった。
現在この聖地には、新しい宇宙の女王を選ぶ為の試験を受けている二人の女王候補者がいる。
その片割れの少女との約束があるのだ。
先日彼が庭園で散歩をしていた時に偶然会った彼女が、今度の日の曜日に会って欲しいと言ってきたので、密かに心待ちにしていたのだった。

どんな天気でもそれなりの楽しみ方はあるが、明るい日の下で微笑む彼女の姿が見れる方がいいから――
晴れてくれて良かったとにっこり微笑んで空を見上げる彼の耳に、コンコン、と控えめなノックの音が届く。

「どうぞ、開いてますよー」

振り向いて扉の向こうの人物に声をかけると、扉が少し開いて隙間からひょっこりと一人の少女が顔を覗かせる。
本日彼と会う約束をしていた少女だ。
肩までの長さの栗色の髪を黄色のリボンで結び、湖のような深い青緑色の瞳をした少女の名は、アンジェリークといった。

「失礼します、ルヴァ様」

彼と目が合うとアンジェリークは、にこっと微笑んで部屋に入ってきた。

「今日は貴女とのお約束がありましたね。えーと、どうしましょうか?」
「ルヴァ様、どこか外へ行きませんか?今日は良く晴れてますし。その…ルヴァ様がよろしければ」

どうやら彼女も、外へ出かけたいと考えていたらしい。
それはちょっとした意見の一致に過ぎないけれど、どこか嬉しいと感じる。
ルヴァはにっこりとアンジェリークに微笑む。

「ああ、それはいいですね〜。丁度外へ出かけたいと思っていたんですよー。庭園と森の湖、どちらがいいですかー?」

アンジェリークはしばらく考え込むと、顔を上げて提案した。

「今日は違った場所に行ってみませんか?どこにでも行けそうな気がしてくる空ですもの」

確かに先ほどまでルヴァが見ていた青空は、どこまでも続いていて――
気の向くまま足を運んでみたい……そう思わせるには十分なほど綺麗な色をしていた。

「ふふ……たまには気の向くまま、あちこち歩くのも良いですね。では先に私の家に寄ってもいいですかー?お弁当を用意して行きましょう」

ルヴァの言葉に、アンジェリークが嬉しそうな顔で後ろ手に持っていた物を見せる。
それは可愛らしいリボンのついた大きめのバスケットだった。

「良かった!今日お弁当作ってきたんです。ルヴァ様のお口に合うかわかりませんけど…」

彼女がバスケットを開けて中身を見せる。
中には大きな弁当箱と、大きな水筒、それにフォークとコップが二つ入っていた。

「お弁当の中身は何ですか?」
「それはお昼まで秘密ですよ。ルヴァ様のお嫌いなものは入ってませんから安心して下さいね」

首を傾げて尋ねるルヴァに、悪戯ぽく笑って答えるアンジェリーク。
少し内気な彼女のこんな表情を見られるようになったのは、ごく最近の事だ。
それだけ試験にも慣れてきたのだろう。その事に安心する。
彼女には泣きそうな表情よりも、笑顔の方が似合っているから――――

「それでは、お昼まで楽しみにしておきますねー。さあ、行きましょうアンジェリーク。バスケットは私が持ちましょう」

アンジェリークからバスケットを受け取って、背中に軽く手を添えて促す。

「ありがとうございますルヴァ様。今日は本当にいい事がありそうですね」

嬉しそうに見上げてくるアンジェリークの笑顔に、ルヴァも自然と笑みが零れる。
たまには気の向くまま、足の向くままに過ごしてみるのも、悪くはない。
私が何より望むのは、貴女の輝く笑顔を見ることなのだから……………。


-Fin-

ようやく書けましたよ、ほのぼのルヴァコレ話(笑)やはりこの二人の基本は「ほのぼの」ですねv
SP2時点の話で、多分恋愛第1段階は済んでると思われます。
今回コレちゃんの笑顔に癒されてるルヴァ様ですが、コレちゃんもまたルヴァ様の笑顔に癒されてると思います。
サブタイトルは「晴れの休日の過ごし方」です。


ここまで読んで下さってありがとうございます

ブラウザバックでお戻り下さい